退職代行で損害賠償を請求される?退職と損害賠償の法律と対処法を解説

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退職と損害賠償

退職代行を使ったことや、退職したこと自体を理由に損害賠償が認められることは、基本的には考えにくいとされています。期間の定めのない雇用であれば、民法627条1項により、労働者はいつでも解約の申入れができ、申入れから2週間で雇用は終了します。ただし、辞め方や手続きによっては賠償責任が生じた裁判例もあります。

この記事では、民法627条・628条と労働基準法16条の内容、損害賠償が問題になりうるケース、会社から請求をほのめかされたときの対応、弁護士に相談すべき状況を整理します。

退職代行の基本的な仕組みは退職代行とはで解説しています。

この記事のポイント
  • 期間の定めのない雇用は、申入れから2週間で終了する(民法627条1項)
  • 有期雇用の途中退職は「やむを得ない事由」が必要で、過失がある側は損害賠償責任を負う(民法628条)
  • 違約金や損害賠償額をあらかじめ決めておく契約は禁止されている(労働基準法16条)
  • 請求をほのめかされても、すぐに支払いや念書に応じず、記録を残して専門家に相談する
目次

退職を理由に損害賠償は認められる?

まず押さえておきたいのは、退職すること自体は法律で認められた行為だという点です。厚生労働省の「確かめよう労働条件」の裁判例解説では、2週間を超える解約予告期間の設定や、退職を会社の許可制にすることは、退職の自由を制限するものとして無効とする方向性が示されています(厚生労働省 確かめよう労働条件)。

一方で、同じページでは、退職の仕方や手続きによっては賠償責任が生じることがあるとも説明されています。つまり「辞めたこと」ではなく「どう辞めたか」が問題になりうるということです。

退職代行を使ったかどうかは、この判断を直接左右するものではありません。退職代行は、本人の退職の意思を会社に伝える手段の一つです。問題になるとすれば、退職代行を使うかどうかにかかわらず、雇用契約の種類や退職のタイミング、引継ぎの状況などです。

期間の定めがない雇用:民法627条

正社員など、雇用期間の定めがない場合は民法627条が適用されます。e-Gov法令検索の民法では、627条の内容はおおむね次のとおりです。

項 内容
1項 期間の定めのない雇用は、各当事者がいつでも解約の申入れができ、申入れの日から2週間で終了する
2項 期間によって報酬を定めた場合、使用者からの解約の申入れは次期以後について、当期の前半にしなければならない
3項 6か月以上の期間で報酬を定めた場合、2項の申入れは3か月前にしなければならない

このため、期間の定めのない雇用であれば、退職の意思を伝えてから2週間が経てば雇用は終了するのが原則です。2週間後に辞めること自体を理由とした損害賠償は、法律上の権利を使っただけなので認められにくいと考えられます。

なお、2週間を待たずにすぐ辞める「即日退職」は、原則として会社の合意が必要とされています(弁護士ドットコムニュース)。有給休暇を使って残りの出勤日をなくす方法などは即日退職と退職代行で解説しています。

期間の定めがある雇用:民法628条と労働基準法137条

契約社員や期間を決めたアルバイトなど、雇用期間の定めがある場合は扱いが異なります。民法628条は、期間の定めがあっても「やむを得ない事由」があるときは各当事者が直ちに契約を解除できるとしたうえで、その事由が一方の過失によって生じた場合は、相手方に対して損害賠償の責任を負うと定めています(e-Gov法令検索)。

つまり、有期雇用の途中で辞める場合は、やむを得ない事由があるかどうかが問題になります。何がやむを得ない事由にあたるかは、個別の事情によって判断されます。

ただし、労働基準法には例外があります。厚生労働省のQ&Aでは、労働基準法14条により一部の例外を除いて3年を超える労働契約は結べないこと、1年を超え3年以内の契約を結んだ場合は、働き始めて1年が経過していれば、労働基準法137条の規定により当面の間は申し出ればいつでも退職できることが説明されています。

雇用の種類 退職の考え方 根拠
期間の定めなし いつでも申入れでき、2週間で終了 民法627条1項
期間の定めあり(原則) やむを得ない事由があれば直ちに解除できる。過失がある側は損害賠償責任 民法628条
1年を超え3年以内の有期契約で、1年経過後 当面の間、申し出ればいつでも退職できる(一部例外あり) 労働基準法137条

アルバイトの場合の考え方はアルバイトの退職代行も参考にしてください。

違約金や賠償額の予定は禁止:労働基準法16条

「途中で辞めたら罰金○万円」「研修費を全額返してもらう」といった取り決めを入社時に求められることがあります。この点について、労働基準法16条(賠償予定の禁止)は、使用者は労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならないと定めています(e-Gov法令検索)。

条文が禁じているのは、違約金や賠償額を「あらかじめ決めておく」契約です。そのため、就業規則や誓約書に「退職したら違約金」と書かれていても、その条項を根拠に請求されるのはおかしいと考えてよいでしょう。

一方で、この条文は、実際に生じた損害について、裁判で賠償が認められる可能性まで否定しているわけではありません。次に紹介する裁判例のように、具体的な損害が生じたと認められた事案もあります。個別の契約書や誓約書の有効性が気になる場合は、弁護士に確認してください。

損害賠償が問題になりうるケース

厚生労働省の解説では、退職の仕方や手続きによって賠償責任が生じた例として、次のようなものが挙げられています(厚生労働省 確かめよう労働条件)。

  • 入社直後の突然の退職により会社が被った損害(賠償額70万円)
  • 労働者負担分の社会保険料の立替金(賠償額31万円)

このほか、一般論として、次のような事情があると損害賠償が問題になる可能性があります。

  • 有期雇用の途中で、やむを得ない事由がないのに辞め、会社に具体的な損害が生じた
  • 重要な業務を担当していたのに引継ぎを一切せずに辞め、取引の打ち切りなど具体的な損害が生じた
  • 会社の備品や機密情報を返却・処分しなかった

ただし、会社が損害賠償を請求するには、損害が実際に生じたことや、その損害と退職との関係を示す必要があると考えられます。「迷惑をかけた」という感情的な理由だけで、賠償が認められるわけではありません。引継ぎ資料を残す、貸与物を確実に返却するといった対応は、トラブルを防ぐうえで役に立ちます。

裁判例:ケイズインターナショナル事件

退職と損害賠償の関係でよく紹介されるのが、東京地裁平成4年9月30日判決(ケイズインターナショナル事件)です。厚生労働省の解説によると、概要は次のとおりです。

  1. 会社は取引先との期間3年の契約を履行するため、常駐担当者として労働者を採用した
  2. 労働者は入社間もなく病気を理由に欠勤して辞職し、取引先との契約は解約された
  3. 会社は得られるはずだった利益1,000万円を失ったとして、労働者に200万円を支払う旨の念書を書かせたが、支払われなかったため提訴した

裁判所は、念書の200万円の約3分の1にあたる70万円と遅延損害金の支払いを命じました。判断にあたっては、給与や経費を差し引けば実際の損害はそれほど多額にならないこと、会社も人物や能力をほとんど調査せずに採用した不手際があったこと、労働者が根拠のない非難を繰り返して話し合いを拒んだことなどが総合的に考慮されています。

この事例から分かるのは、損害賠償が認められる場合でも、会社が主張する金額がそのまま認められるとは限らないという点です。また、念書を書いたことが請求の根拠として使われている点にも注意が必要です。

会社から損害賠償をほのめかされたときの対応

退職を伝えた後に「損害賠償を請求する」と言われても、慌てて応じる必要はありません。次の手順で対応しましょう。

  1. その場で支払いを約束したり、念書や誓約書に署名したりしない
  2. 会社から届いたメールや書面、通話の日時と内容を記録しておく
  3. 雇用契約書や就業規則を確認し、雇用期間の定めの有無を確かめる
  4. 引継ぎ資料や貸与物の返却など、自分でできる対応は済ませておく
  5. 具体的な金額や理由を示して請求された場合は、弁護士に相談する

会社向けのfreeeの解説では、懲戒解雇への切り替えや過度な損害賠償請求をほのめかすような対応は、違法なハラスメントと認定され、会社側が損害賠償を請求される可能性もないとはいえないとされています。

注意したいのは、弁護士でない民間の退職代行業者は、損害賠償をめぐる会社との交渉ができない点です。東京弁護士会のコラムでは、雇用契約の途中解約などは法律問題であると整理されています。会社が損害賠償をちらつかせた時点で、民間業者が対応を終えてしまった例も報じられています(弁護士ドットコムニュース)。業者の対応範囲は退職代行は違法?非弁行為で解説しています。

弁護士に相談すべき状況

次のような場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

状況 相談したほうがよい理由
具体的な金額を示して請求書や内容証明郵便が届いた 法的な反論や交渉が必要になる
有期雇用の途中で辞めようとしている やむを得ない事由の有無の判断が必要になる
入社時に違約金や研修費返還の誓約書を書いている 条項が労働基準法16条に照らして有効かを確認できる
給与の未払いや、賠償を理由にした給与の差し引きを示唆されている 未払い賃金の請求と合わせて対応できる
退職を拒まれ、退職代行の利用も検討している 交渉や訴訟まで一貫して任せられる

損害賠償の請求が予想される場合は、最初から弁護士の退職代行を選ぶ方法もあります。費用や対応範囲は弁護士の退職代行、退職代行の料金相場を参考にしてください。引き止めが強い場合は退職させてもらえない・引き止めへの対処もあわせてご覧ください。

よくある質問

退職代行を使ったことを理由に損害賠償を請求されることはありますか?

退職代行は本人の退職の意思を伝える手段であり、使ったこと自体が損害賠償の理由になるとは考えにくいです。問題になりうるのは、有期雇用の途中退職や、引継ぎ放棄で具体的な損害が生じた場合など、辞め方や手続きに関する事情です。

「辞めるなら違約金を払え」と言われました。払う必要はありますか?

労働基準法16条は、違約金や損害賠償額をあらかじめ決めておく契約を禁止しています。入社時の取り決めを根拠に違約金を求められても、その場で支払う必要はありません。誓約書などがある場合は、弁護士に確認してください。

引継ぎをしないで辞めると必ず賠償責任を負いますか?

必ず負うわけではありません。会社が賠償を求めるには、具体的な損害が生じたことなどが問題になると考えられます。ただしトラブルを防ぐため、引継ぎ資料を残し、貸与物を返却しておくことをおすすめします。

まとめ

期間の定めのない雇用であれば、民法627条1項により申入れから2週間で退職でき、辞めたこと自体を理由に損害賠償が認められることは考えにくいとされています。有期雇用の途中退職では民法628条のやむを得ない事由が問題になり、労働基準法137条の例外もあります。

違約金や賠償額をあらかじめ決める契約は労働基準法16条で禁止されています。それでも具体的な損害が生じた場合は、賠償が認められた裁判例もあります。請求をほのめかされたら、すぐに応じず記録を残し、具体的な請求があれば弁護士に相談しましょう。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の事案についての法的な助言ではありません。具体的なトラブルについては弁護士などの専門家にご相談ください。

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この記事を書いた人

キャリアレポート編集部は、退職代行と退職時の労働トラブルに関する情報を調べてまとめています。記事は法令(e-Gov法令検索)、行政機関や弁護士会の公開情報、報道などをもとに作成し、出典を記事内に明記しています。特定のサービスに偏らず、運営元・料金・対応範囲を比べられるようにすることを編集方針としています。個別の法的判断が必要なケースは、弁護士などの専門家への相談をおすすめしています。

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