退職代行を弁護士に頼むメリットと費用相場|民間・労働組合との違い

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弁護士の退職代行

退職代行を弁護士に頼む最大の意味は、退職の連絡だけでなく、未払いの残業代や退職金の請求、会社との条件交渉、さらに労働審判や訴訟まで、法律上の代理人として一貫して任せられることです。費用は民間や労働組合より高めで、5万〜10万円程度が相場とされ、金銭を回収した場合は成功報酬がかかるのが一般的です。

一方で、「辞めると伝えてほしいだけ」なら弁護士でなくても足りる場合があります。この記事では、弁護士の退職代行でできること、民間・労働組合との違い、費用の考え方、弁護士に頼むべきケースと選ぶときの確認点を順に整理します。

2026年に起きたモームリ事件では、退職代行業者から紹介を受けた弁護士側も有罪となりました。「弁護士監修」と「弁護士が対応」の違いもあわせて説明します。

この記事のポイント
  • 弁護士は退職の連絡に加え、交渉・金銭請求・労働審判や訴訟の代理まで対応できる
  • 費用相場は5万〜10万円程度で、回収額に応じた成功報酬が別にかかることが多い
  • 未払い賃金、ハラスメント、損害賠償を示された場合などは弁護士が向いている
  • モームリ事件では紹介を受けた弁護士側も有罪となり、「弁護士監修」と「弁護士が対応」は別物
  • 依頼前に、弁護士本人が対応するか、追加費用、連絡手段を確認する
目次

弁護士の退職代行とは?民間・労働組合との違い

退職代行は、本人に代わって会社へ退職の意思を伝えるサービスです。基本的な仕組みは退職代行とはで解説しています。運営元は大きく、民間企業、労働組合、弁護士(法律事務所)の3つに分かれます。

違いの根本は、法律上「何をしてよいか」です。弁護士法72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で、法律事件について代理や和解などの法律事務を業として行うことを禁じています(e-Gov法令検索「弁護士法」)。弁護士以外がこれを行うと「非弁行為」と呼ばれます。

東京弁護士会は、残業代の交渉や、契約期間途中の退職、パワハラの慰謝料、退職金、有給休暇の取得などを「法律的な問題」の例として挙げ、業者が本人に代わって交渉し残業代の支払いを取り付けることは非弁行為だとしています(東京弁護士会「退職代行サービスと弁護士法違反」)。非弁行為の考え方は退職代行は違法?非弁行為で詳しく扱っています。

運営元 退職意思の伝達 会社との交渉 労働審判・訴訟の代理
民間企業 できる できない(非弁行為のおそれ) できない
労働組合 できる 団体交渉として可能とされる できない
弁護士 できる できる できる

労働組合は団体交渉権を使って交渉できるとされますが、裁判になった場合に代理人を務めることはできないと説明されています(LegalOn Technologies「退職代行とは」)。仕組みは労働組合の退職代行で解説しています。

弁護士に頼む退職代行でできること

弁護士は依頼者の代理人として、退職に関する法律問題をまとめて扱えます。主な対応は次のとおりです。

退職の意思表示と退職条件の交渉

期間の定めのない雇用では、民法627条1項により、解約の申入れから2週間が経過すると雇用が終了するとされています(e-Gov法令検索「民法」)。弁護士は退職の通知に加え、退職日、有給休暇の消化、引き継ぎの方法、私物や貸与品の受け渡しなどを会社と交渉できます。有給休暇については退職代行と有給消化も参考にしてください。

未払いの残業代・退職金の請求

残業代の有無や金額の算定は法律的な問題で、計算も難しいとされています。東京弁護士会は、業者に任せると本来より少ない額しか支払われない場合があると注意しています(東京弁護士会)。

請求には期限があります。厚生労働省によると、賃金請求権の時効は原則5年とされたうえで、当分の間は3年が適用されます。就業規則などで支給条件が明確な退職手当は5年です(厚生労働省「改正労働基準法等に関するQ&A」)。時間が経つほど請求できる範囲が狭まる可能性があるため、早めの相談が大切です。

損害賠償を示されたときの対応

会社から「急に辞めたら損害賠償を請求する」と言われるケースがあります。弁護士なら、請求に根拠があるかを確認し、代理人として反論や交渉を行えます。ハラスメントを受けていた場合に、こちらから慰謝料を請求することも検討できます。詳しくは退職代行と損害賠償をご覧ください。

労働審判・訴訟の代理

交渉で解決しない場合、裁判所の手続きを使えます。労働審判は、解雇や給料の不払いなど、労働者と事業主の間のトラブルを扱う手続きです。裁判官1名と労働審判員2名の委員会が、原則3回以内の期日で審理します。審判に異議が出ると訴訟に移ります(裁判所「労働審判手続」)。これらの手続きの代理人になれるのは、3つの運営元のうち弁護士だけです。

弁護士の退職代行の費用相場と内訳の考え方

運営元別の一般的な相場は、民間企業が1万〜5万円程度、労働組合が2万5,000〜3万円程度、弁護士が5万〜10万円程度とされています(LUFTMEDIA、ファイナンシャルフィールド)。運営元ごとの比較は退職代行の料金相場でまとめています。

弁護士費用の種類

日本弁護士連合会は、弁護士費用を次のように説明しています(日本弁護士連合会「弁護士費用(報酬)とは」)。

費用の種類 内容
法律相談料 法律相談に対する費用
着手金 依頼時に支払う費用。結果が不成功でも返還されない
報酬金 事件が成功した場合に、成功の度合いに応じて終了時に支払う費用
実費 印紙代、郵便切手代など、事件処理で実際にかかる費用
日当 出張が必要な場合の費用。交通費・宿泊費は別途

日弁連は、弁護士費用は個々の弁護士が基準を定めるもので、決まった標準価格はないとしています。退職代行で示される料金が、これらのどの費用にあたり、何が含まれるかは事務所ごとに異なるため、依頼前に内訳を確認しましょう。

成功報酬がかかる場面

未払いの残業代や退職金を回収した場合、回収額の一部を成功報酬として支払う仕組みが一般的です。弁護士の場合は回収額の20%前後が相場とされています(LUFTMEDIA)。ただし実際の割合や計算方法は事務所ごとに異なります。労働審判や訴訟に進む場合は、別途着手金や実費がかかることもあります。

金額の大小だけでなく、「どこまでが基本料金で、何をしたら追加になるか」を依頼前に書面で確認することが大切です。

弁護士に頼むべきケース・ほかの運営元でもよいケース

弁護士は対応範囲が広い分、費用も高めです。自分の状況に合わせて選ぶのが現実的です。

弁護士に頼むことを検討したいケース

  • 未払いの残業代や退職金を請求したい
  • パワハラ・セクハラを受けていて、慰謝料の請求も考えている
  • 会社から損害賠償や懲戒解雇をほのめかされている
  • 有期雇用で契約期間の途中に辞めたい
  • 会社が退職を認めず、強い引き止めが予想される
  • 労働審判や訴訟になる可能性がある

引き止めへの対処は退職させてもらえない・引き止めへの対処でも解説しています。

ほかの運営元でも足りる可能性があるケース

金銭の請求がなく、会社との争いも予想されず、「辞める意思を伝えてほしいだけ」という場合は、弁護士以外でも足りる可能性があります。ファイナンシャルフィールドも、退職の意思を伝えるだけであれば、ほかの運営元を利用したほうがよいとしています(ファイナンシャルフィールド)。

ただし、最初は伝えるだけのつもりでも、会社の反応によって交渉が必要になることがあります。その場合に民間業者が対応を続けると非弁行為のおそれがあります。迷う場合は、弁護士の初回相談で見通しを聞いてから決める方法もあります。

モームリ事件と「弁護士監修」「弁護士が対応」の違い

紹介を受けた弁護士側も有罪に

2026年2月3日、退職代行「モームリ」の運営会社の当時の代表者らが、弁護士法違反(非弁提携)の疑いで逮捕され、2月24日に起訴されました。利用者を特定の弁護士に紹介し、見返りに紹介料を受け取っていた疑いです(伊藤塾「退職代行の実態」)。

弁護士法27条は、弁護士が72条などに違反する者から事件の紹介を受けることを禁じています(e-Gov法令検索「弁護士法」)。2026年6月5日、紹介を受けていた弁護士法人の代表弁護士に懲役1年6カ月・執行猶予3年、法人に罰金150万円の判決が言い渡されたとされています(伊藤塾)。2026年10月7日には、運営会社から紹介を受けたとして起訴された別の弁護士にも、懲役2年・執行猶予3年の判決が言い渡されました(熊本日日新聞(共同通信))。

運営会社側についても、2026年8月28日に東京地裁が当時の代表者らに執行猶予付きの有罪判決を言い渡し、あっせんした依頼者は計174人に上ったと報じられています(熊本日日新聞(共同通信))。事件の詳細はモームリ事件で問題になったことで解説しています。

「弁護士監修」は弁護士が対応するという意味ではない

この事件が示すのは、「弁護士が関わっている」という表示だけでは安心できないということです。特に次の違いは押さえておきましょう。

表示 一般的な意味 交渉・請求の代理
弁護士監修 サイトの記事や業務の流れを弁護士が確認している 運営元が弁護士でなければできない
弁護士提携・弁護士紹介 交渉が必要になったら弁護士を紹介する 紹介の仕組みによっては非弁提携の問題になり得る
弁護士が対応 弁護士・法律事務所が依頼を受け、代理人となる できる

「弁護士監修」の民間サービスに申し込んでも、会社と交渉するのは弁護士ではありません。契約の相手方が弁護士または弁護士法人かどうかを確認することが重要です。

弁護士の退職代行を選ぶときの確認点

依頼する前に、次の点を確認しておくと後のトラブルを防ぎやすくなります。

  1. 契約相手が弁護士・弁護士法人か:サイトに法律事務所名、弁護士名、所属弁護士会が明記されているか確認します。
  2. 弁護士本人が対応するか:会社への連絡や交渉を誰が行うのか、事務スタッフとのやり取りが中心になるのかを聞いておきます。
  3. 基本料金に含まれる範囲:退職の連絡のみか、有給休暇や退職日の交渉まで含むかを確認します。
  4. 追加費用の条件:成功報酬の割合と計算の基準、労働審判・訴訟に進んだ場合の着手金、実費、日当の有無を確認します。
  5. 委任契約書の有無:費用や業務範囲を書面で受け取れるか確認します。
  6. 対応地域と連絡手段:オンラインで全国対応か、出張時に日当がかかるか、LINE・電話・メールのどれで連絡できるかを確認します。

退職代行で失敗しやすいパターンは退職代行で失敗・後悔するケース、全体的なリスクは退職代行のデメリット・危険性でも整理しています。

よくある質問

弁護士に頼むと会社と揉めやすくなりますか?

弁護士が代理人になったことで会社が身構える可能性はあります。ただ、弁護士は法律に沿って交渉するため、感情的なやり取りを避けやすいという面もあります。揉めるかどうかは会社の対応にもよるため、一概には言えません。

着手金を払ったあと、うまくいかなかったら返金されますか?

日弁連の説明では、着手金は結果に関係なく、不成功に終わっても返還されない費用とされています。返金の条件を設けている事務所もあるため、依頼前に委任契約の内容を確認してください。

アルバイトや契約社員でも弁護士に頼めますか?

雇用形態にかかわらず依頼できます。特に有期雇用で契約期間の途中に辞めたい場合は、法律的な問題になりやすいため、弁護士への相談が向いています。アルバイトの場合はアルバイトの退職代行も参考にしてください。

まとめ

弁護士の退職代行は、退職の連絡から交渉、未払い賃金の請求、損害賠償への対応、労働審判・訴訟の代理まで一貫して任せられる点が最大の特徴です。費用は5万〜10万円程度が相場とされ、金銭を回収した場合は成功報酬がかかるのが一般的です。

金銭の請求やトラブルが予想される場合は弁護士、伝えるだけで足りる場合はほかの運営元も選択肢になります。モームリ事件が示したように、「弁護士監修」と「弁護士が対応」は別物です。契約の相手が弁護士本人か、費用の範囲はどこまでかを確認してから依頼しましょう。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の事案についての法的な助言ではありません。具体的なトラブルについては弁護士などの専門家にご相談ください。

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この記事を書いた人

キャリアレポート編集部は、退職代行と退職時の労働トラブルに関する情報を調べてまとめています。記事は法令(e-Gov法令検索)、行政機関や弁護士会の公開情報、報道などをもとに作成し、出典を記事内に明記しています。特定のサービスに偏らず、運営元・料金・対応範囲を比べられるようにすることを編集方針としています。個別の法的判断が必要なケースは、弁護士などの専門家への相談をおすすめしています。

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